代表者挨拶

2019年のご挨拶

クロスジョブも本年で設立から10年目を迎えることができました。これも一重に利用者、その御家族、そして、雇用ならびに実習等でご協力いただいた企業の皆様、さらに、一般就労に向けて互いに支えていただいた支援機関の皆様のお力添えがあってのものと深く感謝いたしております。

さて、この10年の時代の流れを振り返るときに、なによりも重要なことは、2006年12月国連の障害者権利条約採択から始まった国際社会の流れに日本が、2007年9月署名、以降、同条約に対応する国内法の整備(2011年障害者基本法の改正、2013年障害者差別解消法の成立・障害者雇用促進法の改正)を進め、2014年条約批准、141番目の締結国となったことです。

この10年は、まさに、日本の障害者施策を国際水準に引き上げていくパラダイム転換の10年であったといえます。そこから多くの変化が始まり進んできました。

例えば、障害についても、これまでの障害を本人に起因する医療モデルでなく、障害者基本法において「障害のある人とは、・・・障害や社会的障壁(社会のかべ)によって、暮らしにくく、生きにくい状態が続いている人をいいます。」と規定され、社会的障壁という概念が示され、社会モデルとしての考えが浸透しました。

さらに、差別禁止については、「合理的配慮の否定を含む差別の禁止」とされ、合理的配慮という概念が示され、改正障害者雇用促進法にも大きく位置づけられることになりました。また、それ以外にも、意思決定支援など、新たな考えが深まっていた10年でした。

このような大きな底流の変化の基、様々な障害者雇用促進の施策が、打ち出され具体化されていきました。

とりわけ、クロスジョブ立ち上げの大きな目的であった就労移行支援事業については、立ち上げた頃は、時の政権交代に翻弄され、就労移行支援事業の存続が危ぶまれていましたが、今や就労移行支援事業は、障害者就業支援を牽引する大きな一翼となりました。就労移行支援事業のみに取り組む事で、就労移行支援事業の確立に挑んだ当法人の初期の目標も達成されたといえます。

また、特例子会社、企業内ジョブコーチの広がりのもとで、障害者雇用促進の軸も支援機関から企業の雇用管理へと大きく舵が切られようとしています。さらに、昨今の一般雇用における就業定着が不安定な状況も障害者雇用を後押し、雇用や実習への地域の企業理解、そして連携も10年前とは、比べものにないほど変わりました。

こうした中で、実雇用率が10年前は、1.65%であったものが、2017年には1.97%となり、中でも、2006年1,917.5人であった精神障害者雇用は、2017年には、50,047.5人と実に26倍へ拡がりました。こうした流れを背景についに、2018年4月、精神障害者雇用義務化と法定雇用率2.2%への引き上げが行われました。

実に障害者雇用率制度が始まって約40年、知的障害者雇用義務化から約20年余りの時が経過しましたが、この義務化が、向こう10年、日本の労働環境をさらに大きく変えていくことになると考えています。

それは、2008年482,905人おられた精神障害者保健福祉手帳所持者が、その後、毎年5万人近く増加し続け、2017年には、100万人を超えています。その9割以上が18歳以上で、大人になって障害者手帳を取られる方が増えていること、働く環境の下で増えていることです。(この中には、会社の中核的存在であった方が、高次脳機能障害になられた事例も多く含まれています。)

世界でまれにみる超少子高齢化社会に向かい、喫緊の課題となっている日本の労働力不足に、政府も「働き方改革」と全面に打ち出し、今年も多くの法改正がなされようとしています。しかし、昨年の中央省庁をはじめ官公庁における障害者雇用の水増しとその後の対策、更に、年末国会における外国人労働者拡大の為の入管法改定審議等、いずれも働く人を数としてしか見ていない構図がある限り、根本的解決にはならないと考えています。

なによりも問われていることは、多くの著名人が「真の働き方改革は障害者雇用」と語り始められているように、日本の労働現場が、益々合理的配慮を伴う雇用へと移行していくことにほかなりません。

そして、もう一つ10年を振り返り忘れてはならないことがあります。それは、1980年代以降、国家財政の「危機」の下「行政改革」が叫ばれ、鉄道、通信事業から始まった様々な公的サービスの民営化に組み込まれてしまった障害福祉サービスが、この10年でどのように変わってきたかということであります。

いずれの分野も、サービスは多様化されたものの、その営利主義的傾向は拡大し、とりわけ、地方は切り捨てられる現実に進み、障害福祉サービスも益々その渦中に取り込まれようとしています。就労移行支援事業も、人口や企業の多い都会に集中し、地方では、多機能型で運営されているところが多く、その多くが、就労移行支援事業をやめざる負えない状況となっています。

会社に行って働きたいが一人では難しいという状況の方は、地方にも多くおられます。国民の一人一人の税金で進められている障害福祉サービスである限り、そうした方々に応えうる事業であらねばなりません。

亥の年の「亥(い)は発芽に備えてエネルギーを貯める時期」といわれ、植物の成長に例えれば、葉っぱも花も散ってしまい、種に生命を引き継いだ状態です。亥の季節は冬、春の芽吹きまで、じっと固い種の中でエネルギーを内にこめている、まさにそうしたイメージが亥年の持つ意味です。

来年、クロスジョブは、設立10周年を迎えます。亥の年、クロスジョブは、この10年間の前進、様々な課題や困難に向き合って歩んできた営みを整理し、社員一人一人の内なるエネルギーにしっかり引き継いでいただき、新たな時代の課題により大きくチャレンジする法人へと飛躍したいと思います。

本年も変わらぬお力添え、よろしくお願いします。

クロスジョブ代表 濱田和秀