高次脳機能障害とは、交通事故や頭部のけが、脳卒中などで脳が部分的に損傷を受けたため、言語や記憶などの機能に障害が起きた状態をいいます。
注意力や集中力の低下、比較的古い記憶は保たれているのに新しいことは覚えられない、感情や行動の抑制がきかなくなるなどの精神・心理的症状が現れ、周囲の状況にあった適切な行動が選べなくなり、生活に支障をきたすようになります。
また、外見上では分かりにくいため、周囲の理解が得られにくいと言われています。
高次脳機能障害とは、脳の一部が損傷されたために失語症(他人の言葉を理解できない、自分でうまく表現できない)、記憶障害(さっき言ったこと・言われたことを忘れるなど新しいことを覚えることが難しい)、注意障害(注意を向ける体力がなく、ものごとに集中できない)など、脳の高度で複雑な機能に障害が起こるものです。
一見したところ、手足の運動機能障害のように明らかな変化として見えないために周囲からはわかりにくいのですが、今までには見られなかった上記のような症状が突然あらわれ、まるで性格が変わってしまったような反応が周囲の人たちを戸惑わせてしまうことがあります。
高次脳機能障害には、上にあげた以外に次のような症状があります。これらがすべてあらわれるわけではなく、脳のどの部分を損傷したかにより、症状は異なります。
高次脳機能障害をもたらす主な原因として、脳血管障害、脳外傷、低酸素脳症などがあげられます。
脳血管障害は脳卒中とも呼ばれ、脳の血管が詰まったり破れるなどして、脳の機能が十分に働かなくなる病気の総称です。死亡や寝たきり状態をもたらすことも多い、重要な生活習慣病の一つです。
脳外傷は、脳を覆っている頭蓋骨が外からの何らかの力で損傷され、脳が傷つくものです。原因として多いのは交通事故で、男性に目立ちます。
低酸素脳症は、本来酸素を非常に必要とする脳に、一時的に酸素が供給されなくなって障害が起きるものです。心筋梗塞などによる心臓停止、窒息、溺水(できすい)、ぜん息、一酸化炭素中毒などが主な原因としてあげられます。
こうした原因疾患への治療のなかで、意識が戻ってから「何かおかしい」と気づかれることがあります。また、家庭や職場に戻ったとしても、日常生活や社会生活にうまく適応できないことで家族や周囲の人たちが気づくことも少なくありません。