https://crossjob.or.jp/map/ https://crossjob.or.jp/link

障害者雇用とスキルアップについて S   以前スタッフとの会話で「わたしは手に職をつけるような、スキルが身につく仕事がしたいんです」と話したところ、「へ~そうなんですね」と返されました。 わたしの予想では「やっぱスキルは大事ですよねえ」といった内容が返ってくると思っていたので、このふんわり受け流すかのような相槌に違和感を覚えました。   障害者の就労でスキルアップを望む人は少数派なんでしょうか?   確かに、そもそも就労ができていないのにスキルアップだなんて遥か先の話ですが、若い人が働いていく中で必ず直面する問題が自身の“スキル”についてではないでしょうか。   終身雇用制度が終わりを迎えようとする時代に生きる人たちにとって、正規雇用で就職出来たら一生安泰なんてことはありません。 万が一の時、自分は転職できるのか?というのは、大きな関心事だと思います。   「中途採用は即戦力を求められるからアピールできる具体的な能力がないと大変ですよ、そうならないためにこんな対策が必要ですよ、ちなみにこんな素敵なサービスもありますよ、ぜひどうぞ!」   このようなリクルート会社の巧みな宣伝によって、わたしたちには“転職市場価値”という概念がインストールされ、それは半ば今の時代の常識へと姿を変えつつあるように思います。       自分でインターネットで調べたり、先日行われたハローワーク主催の障害者合同面接会に行って説明を聞いたりして感じましたが、障害者雇用の求人にはスキルが身につく仕事が少ないのではないでしょうか。   もちろんそれが、一般求人の人と同じようには働けないわたしたち障害者のためを思って考えられた作業内容なのは理解しています。 働くことに不安を持っている人が勇気を出して始めるには簡単な内容な方が助かるでしょう。 発達障害の人の中には、普通の人なら飽き飽きしてしまうような作業をひたすらに、黙々と作業することが得意な方もいらっしゃいますし、現にそういう活躍の仕方をしている方もたくさんいらっしゃるでしょう。   しかし、障害者にも健常者同様、いろんな人がいます。   今まで自分も周りも健常者だと思って育ってきたけど大人になってから発達障害が判明した人や、バリバリ仕事してきたけど病気になってもう今まで通りには働けない人もいます。 バックグラウンド、趣味趣向、価値観、得意・不得意、認知機能、発達特性、すべて人によって違います。 障害のない人と何ら変わらず、行きたい業界や業種、将来の夢に至るまで、人によって違う希望をもっています。       なんだかきれいごとを言ってしまい恥ずかしいので俗な話をしますが、スキルは持っているだけで安心できるお守りなのです。   優しかった上司が異動して新上司がひどいパワハラをしてきても、尊敬していた社長の倫理観が最低なことが判明しても、説明会ではやさしい顔をしていた女性が最強のお局だったとしても、どんなことがあっても「まあこんな会社いつでも辞めてよそで働けるんですけどね」と思えることは、精神衛生上非常にいいことは間違いありません。   友達と仕事の話になった時も、「みんなすごそうなことしてるなあ。それに比べて自分は……」などと落ち込まなくて済みます。   インスタグラムで続々と知り合いの結婚報告が流れてきて、自分はこの先ずっと独り身なんだろうかと落ち込むこともあります。 そんな時、仕事をしてお金が稼げさえすれば、少なくとも物質的には満たされることが確約されます。「今の会社ではこういうスキルが付いたから、転職するとしたらこういうスキルも追加して、そこまでできればそれなりの待遇で雇ってもらえるだろう。最終手段としてフリーランスもあるぞ。」 このぼんやりとした想定が、暗くて長い人生の道を暖かく照らしてくれるのです。       障害の有無にかかわらず、仕事でつかえるスキルを持つことは非常に有用です。 しかし現状、スキルが身につく障害者求人は多くありません。 一般求人と同じ作業内容が書いてあるなと思って話を聞いてみると、配慮をもらった働き方は難しそうな語り口だったりします(身体障害者を想定しているのでしょうか?)。   クロスジョブではその人に合った働き方ができるよう企業の方と交渉してくれますが、個人で「求人票にはこう書いているけど自分はこうしてほしいんです!」と訴えかけることができるのはパッションにあふれたごくわずかな人だけでしょう。たとえそれができたとしても、いきなり現れた個人の要求(わがままと捉えられる可能性も十分あります) を受け入れてもらえるかどうかは怪しいところです。   逆に、求人票を見た印象と実際に担当者の方に話しをうかがった印象が、良い意味で覆されたこともあります。実際は個人の特性や欲しい配慮に合わせて柔軟に対応する意欲があるのに、それが型にはまった求人票の紙面に表し切れていないこともあると思います。       個人的には障害者雇用なんて枠組みを廃止して、すべての人に対してその人のニーズに応じた採用をすればいいのにと思います。 生まれつきの理由で出来ないことや苦手なことがある人、病気がある人、育児・介護がある人、副業や趣味など他にやりたいことがある人、他にも多くの “フルタイム(+ 残業)の正規雇用 ”という労働条件を前に涙を呑んできたあらゆる人が救われると思います。   でも、そうもいかない理由が、きっと山盛りあるのでしょうね。   今のわたしに社会の仕組みを変えることはできないので、障害者求人にもバリエーションがほしいよという訴えを伝えるに留めようと思います。